最近、姫路市のフイルムコミッションから映画ロケ使用の依頼が多くなった。本徳寺を使ったロケは以前からもあったが、最近は年に一、二回のペースで打診がある。大河ドラマ「新撰組」の撮影のころからこの傾向が強まり、「女信長」、大河ドラマ「軍師官兵衛」、昨年は「本能寺ホテル」と「関ヶ原」のロケに使われた。
本徳寺の本堂が京都の本願寺の北集会所としてあったころ、実際の新撰組によって占拠された史実が裏付けられており、「新撰組」のロケには最適であろう。「軍師官兵衛」も英賀門徒の攻防や石山本願寺の見立てで石山合戦が撮影されており、共に播州の真宗史とも深い関係がある。このような利用のされ方は、歴史的遺産の新たな活用として妥当な所であろう。最近は、姫路市も観光に注視した都市政策を進めており、旅行社によるロケ地巡りのツアーも組まれ、多くの来訪者が訪れることになる。
話は変わるが、本徳寺を高く評価している作家に五木寛之氏がおられる。五木氏との出会いは、大広間天井画の竣工式で講演をしていただいた時に始まる。その後、五木氏の企画した「百寺巡礼」で亀山本徳寺が取り上げられた。中世の寺内町の風情を未だに残していると言うことらしい。その位置づけは江戸時代の檀家寺ではなく、中世の播州門徒の寺という側面を前面に打ち出した構成である。テレビ朝日系列で何度か放映され、DVDも一般に販売され
ている。なるほど、歴史作家の鋭い視点もさることながら、これほどまでに本徳寺を印象づけた作品は皆無である。興味のある方は、本徳寺に来訪の折、大広間の大型テレビ画像で今一度ご覧頂きたい。
このように、映画やテレビで本徳寺の露出頻度が多くなるにつれて、真宗門徒以外の観光を目的に来訪する人が多くなってきた。この傾向はお寺としてはあまり歓迎できないが、若者の来訪者がお寺の内部を拝観し、その仏教的雰囲気のなかで、仏前に手を合わせ、法話の一つでも聴いて仏教に関心をもってくれれば、よしとせねばなるまい。